海の上でジグをシャクっている時間が好きだ。
ジグを落として、シャクる。
また落として、シャクる。
水中では今、どんな動きをしているんだろう。
跳ね上がったジグが横を向き、ゆっくり沈んでいく。
そんな様子を頭の中で想像しながら、ロッドを動かす。
魚は追ってきているだろうか。
今のフォールはどうだっただろう。
答えは見えない。
だから、また落とす。
何度も繰り返す。
傍から見れば、なかなか地味な作業だ。
そして突然。
ズドン。
ロッドに重みが乗る。
さっきまで想像の中にしかいなかった魚が、突然現実になる。
この瞬間が、たまらない。
何時間も同じことを繰り返して、たった一度の衝撃に夢中になる。
冷静に考えると、ずいぶん効率の悪い遊びである。
それでも、また海へ行きたくなる。
困ったものだ。
釣り道具の話は、少々長くなる。
釣りに行くのも好きだが、釣り道具を選んでいる時間も好きだ。
ロッドの長さ、硬さ、曲がり方。
リールのギア比、巻き上げ力、糸巻き量。
調べ始めると、なかなか終わらない。
ようやく候補を二つに絞ったと思えば、三つ目が現れる。
そして、また最初から調べ直す。
そもそも、何を基準に選べばいいのか。
高い道具が必ずしも自分に合うとは限らない。
だったら、どれがいい?
カタログを眺め、レビューを読み、動画を見る。
気がつけば、さっきまで候補になかった道具まで気になっている。
これは困った。
結局、最初に気になっていた道具に戻ることもある。
じゃあ、あの数時間は何だったのか。
いや、無駄ではない。
たぶん。
そんなことを繰り返しながら、少しずつ自分の釣り道具が増えていく。
買う前から、ずいぶん忙しい。
魚を釣ったら、帰ってからも忙しい。
我が家には、ひとつルールがある。
「持って帰ってくるなら、自分でやってね!」
妻からのお達しである。
まったくもって正論だ。
初めて魚をさばいたのは、いただきもののサゴシだった。
使ったのは、ごく普通の家庭用包丁。
今は便利な時代だ。
動画を見れば、魚のさばき方なんていくらでも出てくる。
なるほど、そうやるのか。
頭の中では、すでに三枚おろしを習得していた。
ところが、実際に包丁を握ると話が違う。
思ったところに刃が入らない。
身はボロボロになる。
キッチンには、なんとも言えない魚のにおいが漂っている。
動画では、あんなに簡単そうだったのに。
それでも、自分で釣った魚を自分で料理して食べる楽しさを知ってしまった。
初めて釣った真鯛は、刺身に、昆布締めに、カルパッチョ。
昆布締めは二時間ほど。
献立だけは、ずいぶん立派になった。
ちなみに、キッチンは相変わらず戦場だった。
その後、出刃包丁も購入した。
これで少しは上達するだろう。
道具が変われば、きっと何かが変わるはずだ。
結果、劇的な変化は見られなかった。
どうやら問題は包丁ではなかったらしい。
なお、二日後。
キッチンの片隅で、真鯛の大きな鱗が一枚発見された。
どうやら、まだ片付けは終わっていなかったらしい。
そんな釣りの話を、ここに。
釣れた魚のこと。
釣れなかった日のこと。
悩みに悩んで選んだ釣り道具のこと。
実際に使ってみて、よかったもの。
思っていたのと、ちょっと違ったもの。
そして、ときどきキッチンの戦況報告。
そんな話を、少しずつ書いていこうと思う。
まだ知らないことは、山ほどある。
できないことだって、たくさんある。
でも、それが面白い。
わからないことは調べてみる。
それでもわからなければ、誰かに教えてもらえばいい。
実際にやってみなければ、わからないこともある。
そのうち、今より少しは釣りがうまくなっているかもしれない。
料理の腕も上がっているかもしれない。
そちらについては、あまり期待しないでいただきたい。
時間が余っているから、釣りに行くわけじゃない。
釣りに行きたいから、時間を作る。
せっかく夢中になれるものがあるんだから、思いきり楽しみたい。
そんな釣りの記録を、ここに残していこうと思う。
飲み物を片手に、気軽に立ち寄ってもらえたらうれしい。
さて、釣りの話でもしようか。

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